結論から
- 実労働時間は(退勤 − 出勤)− 休憩。まず拘束時間を出してから休憩を引くと間違えません。
- 休憩は実労働が6時間を超えたら45分、8時間を超えたら60分(労基法34条)。8時間ちょうどは45分で足ります。
- 10進に直すときは分 ÷ 60。8時間15分は8.25時間で、「8.15時間」ではありません。
- 日をまたぐ夜勤は、引き算の結果がマイナスになったら24時間を足す。
- 丸めるのは最後の1回だけ。下の例では日ごとに15分切り捨てると月20日で2時間23分が消えました(この記事が置いた20日分の打刻での実測値)。
足し算・引き算そのものは時間の計算ツールに任せられます。この記事は、そのツールに何を入力すればいいのかを決めるための話です。
順番を間違えない——まず拘束時間、次に休憩
勤務時間の集計でいちばん多い事故は、計算ミスではなく引く順番の取り違えです。正しい手順は次の2段階だけです。
第1段階は拘束時間を出すこと。退勤時刻から出勤時刻を引きます。第2段階はそこから休憩時間を引いて実労働時間にすること。給与の対象になるのも、労働基準法が上限を定めているのも、この実労働時間のほうです。
この2つを混ぜてしまうと、「9時〜18時だから9時間働いた」という集計になります。休憩1時間が入っていれば実際は8時間です。逆に、休憩を先に引いてから時刻の引き算をしようとすると、繰り下がりが二重にかかって合わなくなります。
| 出勤〜退勤 | 拘束時間 | 休憩 | 実労働 | 10進表記 | 法定の休憩 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9:00〜18:00 | 9時間 | 60分 | 8時間 | 8時間 | 足りている |
| 9:00〜17:30 | 8時間30分 | 45分 | 7時間45分 | 7.75時間 | 足りている |
| 8:30〜17:15 | 8時間45分 | 60分 | 7時間45分 | 7.75時間 | 足りている |
| 10:00〜15:00 | 5時間 | なし | 5時間 | 5時間 | 足りている |
| 9:00〜16:00 | 7時間 | 45分 | 6時間15分 | 6.25時間 | 足りている |
| 9:00〜18:15 | 9時間15分 | 45分 | 8時間30分 | 8.5時間 | 15分たりない |
| 9:00〜20:30 | 11時間30分 | 60分 | 10時間30分 | 10.5時間 | 足りている |
注目してほしいのは最後から2番目の行です。9:00〜18:15・休憩45分は、実労働が8時間30分になるため8時間を超えます。この場合に必要な休憩は60分なので、15分足りていません。 「残業は15分だけだから休憩はそのままでいい」と考えると、ここで法定の下限を割ります。
※ 拘束時間の引き算は時間の計算ツールの「引き算」モード、日ごとの実労働を月でまとめるときは「複数合計」モード(1回につき最大10行)が使えます。
休憩の下限は「超えたら」で決まる(労基法34条)
労働基準法34条1項は、休憩について次のように定めています。実労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を、労働時間の途中に与えなければならない——という規定です。
ここで効いてくるのが「超える」という言葉です。6時間ちょうど、8時間ちょうどはそれぞれ下の段のままになります。1分でも超えた瞬間に必要な休憩が増える、という段差のある決まり方をしています。
| 実労働時間 | 必要な休憩 | 最短の拘束時間 | 境目の読み方 |
|---|---|---|---|
| 4時間 | 不要 | 4時間 | 6時間以下は休憩なしでも違法にならない |
| 6時間 | 不要 | 6時間 | 6時間以下は休憩なしでも違法にならない |
| 6時間1分 | 45分 | 6時間46分 | 6時間を「超えた」ところから45分 |
| 7時間30分 | 45分 | 8時間15分 | 6時間を「超えた」ところから45分 |
| 8時間 | 45分 | 8時間45分 | 6時間を「超えた」ところから45分 |
| 8時間1分 | 60分 | 9時間1分 | 8時間を「超えた」ところから60分 |
| 9時間 | 60分 | 10時間 | 8時間を「超えた」ところから60分 |
| 10時間30分 | 60分 | 11時間30分 | 8時間を「超えた」ところから60分 |
判定の対象が拘束時間ではなく実労働時間である点にも注意してください。拘束9時間・休憩45分なら実労働は8時間15分になり、8時間を超えるので休憩は60分必要です。つまり「休憩45分で拘束9時間」という組み方は、そもそも成立しません。
休憩にはこのほか、労働時間の途中に与えること、原則として一斉に与えること(労使協定がある場合や運輸・商業・保健衛生など一定の業種は例外)、自由に利用させることという条件があります。電話が鳴ったら出る前提で席にいる昼休みは、この「自由利用」を満たさないため、休憩ではなく労働時間として扱うのが原則です。分割して与えること自体は禁止されていないので、45分を30分+15分に分けるのは問題ありません。
なぜ60進法でつまずくのか
日常で扱う数のほとんどは10進法です。そこに時間だけが割り込んでくるため、頭の切り替えが追いつかないところで間違いが起きます。つまずき方は大きく2種類です。
ひとつめは繰り上がり・繰り下がり。30分+45分は75分ですが、これを「1時間75分」と書いてしまう、あるいは17時30分から9時45分を引くときに分の側で借りられずに詰まる、というパターンです。
ふたつめが厄介で、小数点を「区切り記号」として読んでしまうことです。8時間15分を「8.15時間」と書く間違いはここから来ます。小数点以下は1時間を1とした割合なので、0.15時間は9分(0.15 × 60)です。実際には15分=60分の4分の1なので8.25時間が正解で、「8.15時間」と書くと8時間15分を8時間9分として申告したことになります。月20日分だと無視できない差です。
覚え方としては、15分=0.25・30分=0.5・45分=0.75の3つを暗記し、それ以外は「分 ÷ 60」で出すのが確実です。時間の計算ツールは結果を「8時間15分」と「8.25時間」の両方で出すので、勤怠表に書く前の確認に使えます。
Excelで集計している場合の落とし穴も、根は同じです。Excelは1日を「1」とするシリアル値で時刻を持つため、合計が24時間に達すると桁が上がって表示が0:00に戻ります。表示形式を [h]:mm にすれば24時間超えも表示できますが、そのセルに時給を掛けても正しい金額にはなりません。「1」が24時間なので、金額を出すときは セル × 24 × 時給 と24を掛けて10進の時間に直す必要があります。
日をまたぐ夜勤は「24時間を足す」
夜勤やシフト勤務では、退勤時刻が出勤時刻より小さい数字になります。22:00に出勤して翌6:30に退勤するケースをそのまま引くと結果はマイナスです。ここで手が止まる人が多いのですが、やることは単純で、マイナスになったら24時間を足すだけです。
| 出勤〜退勤 | そのまま引くと | 24時間を足す | 休憩 | 実労働 | 10進表記 |
|---|---|---|---|---|---|
| 22:00〜翌6:00 | −16時間 | 8時間 | 60分 | 7時間 | 7時間 |
| 22:00〜翌6:30 | −15時間30分 | 8時間30分 | 60分 | 7時間30分 | 7.5時間 |
| 23:00〜翌8:00 | −15時間 | 9時間 | 60分 | 8時間 | 8時間 |
| 20:00〜翌5:15 | −14時間45分 | 9時間15分 | 45分 | 8時間30分 | 8.5時間 |
| 17:00〜翌1:30 | −15時間30分 | 8時間30分 | 45分 | 7時間45分 | 7.75時間 |
もうひとつ、夜勤には深夜割増の境目という別の集計軸があります。22時から翌5時までの労働には25%以上の割増が必要(労基法37条4項)なので、同じ1回の勤務でも「深夜帯に何時間かかったか」を別に数えなければ給与になりません。22:00〜翌6:30の勤務なら、22:00〜翌5:00の7時間が深夜帯です。
つまり夜勤の集計は、実労働時間の合計を出しただけでは終わりません。深夜帯の時間数はそこから切り出して数える必要があります。割増の計算そのものは残業代計算ツールが、割増率の全体像は残業代の計算方法と法律の基礎が扱っています。
丸めるのは最後の一度だけ
労働時間は1分単位で把握するのが原則です。それでも「15分単位で入力してください」と言われる職場は少なくありません。この切り捨てが1日ごとに効くと、消える時間がどれだけ積み上がるのかを実際に計算してみます。
下は、打刻がきりのよい数字にならなかった月20日分(8時間7分、7時間52分、8時間23分……)を、丸め方を変えて合計した結果です。金額は時給1,200円で換算しています。
| 丸め方 | 月合計 | 10進表記 | 1分単位との差 | 時給1,200円での差額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1分単位(原則) | 163時間38分 | 163.63時間 | — | — | 打刻どおり。これが基準になる |
| 日ごとに5分切り捨て | 162時間50分 | 162.83時間 | −48分 | −960円 | 1日あたり最大4分が消える |
| 日ごとに15分切り捨て | 161時間15分 | 161.25時間 | −2時間23分 | −2,860円 | 1日あたり最大14分が消える |
| 日ごとに15分四捨五入 | 163時間45分 | 163.75時間 | +7分 | +140円 | 切り上がる日もあり、多くなることも少なくなることもある |
| 1分単位で合計し、月末に15分切り捨て | 163時間30分 | 163.5時間 | −8分 | −160円 | 丸めが効くのは月に一度だけ |
なお、時間の計算ツールのページにも同じ話題があり、そちらは違う金額・違う時間が出ています。あちらは5日分の打刻から1日あたりの平均を出して20倍した概算で、こちらは20日分をそのまま積み上げた値だからです。 切り捨てで消える分は「その日の端数が15分にどれだけ近いか」で1日ごとに0〜14分59秒まで振れるため、 少ない日数の平均を引き伸ばすと実際より大きくも小さくも出ます。どちらが正しいというより、月ごとに変わる値です。自分の月で知りたいなら、実際の打刻を入れて計算してください。
ポイントは、丸めを何回かけるかです。日ごとに15分で切り捨てると20回分の切り捨てが積み上がって2時間23分(2,860円)が消えます。同じ15分単位でも、1分単位で合計してから月末に一度だけ切り捨てれば、失われるのは最大でも14分59秒で、この月は8分でした。切り捨てる幅は同じでも、かける回数が20分の1になるからです。
四捨五入は切り上がる日もあるため、一方的に減るとは限りません。この20日分では1分単位の合計より7分多く出ました。いずれにせよ「1分単位の合計と一致する」保証はないということです。集計は1分単位のまま足し、丸めるのは最後の一度——これが誤差を最小にする手順です。
端数処理には例外もあります。1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働の各合計に1時間未満の端数が出た場合に限り、30分未満を切り捨て・30分以上を1時間に切り上げる取扱いが、行政通達(昭和63年3月14日 基発第150号)で示されています。これは月単位の合計に対する処理で、日ごとの切り捨てを認めるものではありません。自社の給与規程がどちらの方式なのかは、就業規則で確認できます。
集計した時間を給与に直すには、合計が1本では足りない
実労働時間の合計が出ても、それに時給を掛けただけでは給与になりません。割増率が違う時間は、別々に合計しておく必要があるからです。
最低限、次の4本は分けて数えることになります。①所定労働時間の中(割増なし)、②所定は超えたが1日8時間・週40時間の範囲内(いわゆる法定内残業。割増は不要で、通常の時給を1時間分払う)、③1日8時間・週40時間を超えた分(時間外)、④22時〜翌5時の分(深夜)。③と④は重なると倍率が積み上がります。
| 区分 | 倍率 | 時給1,200円なら | 根拠・補足 |
|---|---|---|---|
| 所定労働時間内 | 1.00倍 | 1,200円 | 割増なし。求人票の時給そのもの |
| 時間外(法定労働時間超) | 1.25倍 | 1,500円 | 1日8時間・週40時間を超えた分に25%以上 |
| 深夜(22時〜翌5時) | 1.25倍 | 1,500円 | 所定時間内でも深夜帯なら25%以上を加算 |
| 時間外 + 深夜 | 1.50倍 | 1,800円 | 時間外25% + 深夜25% で50% |
| 法定休日 | 1.35倍 | 1,620円 | 週1日(または4週4日)の法定休日の労働に35%以上 |
| 法定休日 + 深夜 | 1.60倍 | 1,920円 | 休日35% + 深夜25% で60% |
| 月60時間を超えた時間外 | 1.50倍 | 1,800円 | 2023年4月から中小企業にも適用 |
この表でとくに見落とされやすいのが「時間外 + 深夜」です。時間外25%と深夜25%は別々の規定なので、両方に当たる時間は足し合わせて50%増になります。夜遅くまでの残業を「残業だから1.25倍」でまとめて計算すると、22時以降の分が不足します。
集計そのものは時間の計算ツールの「複数合計」モードを、区分ごとに繰り返し使うのが確実です。出した時間数を金額に直すときは、時給制なら時給計算ツール、月給から1時間単価を割り出す必要があるなら残業代計算ツールが使えます。
よくある質問
9時から18時まで、休憩1時間の勤務は何時間ですか?
実労働時間は8時間(8時間)です。まず退勤から出勤を引いて拘束時間9時間を出し、そこから休憩60分を引きます。実労働が8時間ちょうどなので、労働基準法34条が求める休憩は45分で足ります。60分の昼休みを取るのは就業規則がそう定めているからで、法定を上回る休憩を定めること自体に問題はありません。
8時間15分は何時間ですか?給与計算用の書き方が知りたいです。
8.25時間です。15分は1時間(60分)の4分の1なので0.25になります。「8.15時間」と書くのが最も多い間違いで、これだと8時間9分(0.15 × 60 = 9分)を意味してしまいます。分を10進の時間に直すときは必ず60で割ってください。
休憩は何分取らせないといけませんか?
労働基準法34条1項で、実労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間と決まっています。6時間ちょうど・8時間ちょうどは下の段のままなので、6時間勤務なら休憩ゼロでも違法にはなりません。また休憩は労働時間の「途中」に与える必要があり、始業前や終業後にまとめて付けることはできません。
拘束時間と労働時間の違いは何ですか?
拘束時間は会社にいる時間の全体(退勤時刻 − 出勤時刻)、労働時間はそこから休憩を引いた実際に働いた時間です。給与計算の対象になるのは労働時間のほうです。休憩は「自由に利用できる時間」でなければならないため、電話番をしながらの昼食のように職場を離れられない時間は、休憩ではなく労働時間として扱うのが原則です。
夜勤で日をまたぐときはどう計算しますか?
退勤時刻が出勤時刻より小さくなるので、そのまま引くとマイナスになります。24時間を足してから計算してください。たとえば22:00〜翌6:30なら、6:30 − 22:00 = −15時間30分に24時間を足して8時間30分が拘束時間、休憩60分を引いて実労働は7時間30分です。
会社が勤務時間を15分単位で切り捨てるのは違法ですか?
労働時間は1分単位で把握するのが原則とされており、日ごとに切り捨てて賃金を支払わない扱いは、その分の賃金不払いにあたると指摘されることがあります。例外として、1か月の時間外労働・休日労働・深夜労働の各合計に1時間未満の端数が出た場合に、30分未満を切り捨て・30分以上を1時間に切り上げる処理が行政通達(昭和63年3月14日 基発第150号)で示されています。日ごとの切り捨てとは別の話なので、自社の給与規程がどちらなのかを確認してください。この記事の例では、日ごとに15分切り捨てると月20日で2時間23分、月末に一度だけ丸める場合は8分の差になりました。
Excelで勤務時間を合計したら 0:00 になってしまいます。
Excelは1日を「1」とするシリアル値で時刻を扱うため、合計が24時間に達すると桁が上がって表示上は0に戻ります。セルの表示形式を [h]:mm(角括弧つき)にすると24時間を超えた合計がそのまま表示されます。また、その時刻セルに時給を掛けても正しい金額になりません。「1」が24時間なので、金額を出すときは セル × 24 × 時給 のように24を掛けて10進の時間に直してください。
着替えや朝礼の時間は労働時間に入りますか?
労働時間かどうかは、その時間が使用者の指揮命令下に置かれていたと評価できるかで判断されます。最高裁は三菱重工業長崎造船所事件(平成12年3月9日判決)で、作業服や保護具の着脱が義務づけられ事業所内で行う必要があった事案について、その時間を労働時間にあたると判断しました。参加が事実上強制されている朝礼や、指示による開店前の準備も同じ考え方で扱われます。ただし判断は個別の事情によるため、自分のケースについては労働基準監督署などに確認してください。
参考資料
- 労働基準法 第32条(労働時間)・第34条(休憩)・第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)
- 厚生労働省通達 昭和63年3月14日 基発第150号(1か月の時間外労働等の合計時間数の端数処理)
- 最高裁判所 平成12年3月9日判決(三菱重工業長崎造船所事件。作業服等の着脱時間と労働時間性)
この記事は労働基準法の一般的な内容を整理したもので、個別の労務相談に対する回答ではありません。実際の労働時間の扱いは、就業規則・労使協定・業種ごとの特例(変形労働時間制、事業場外みなし労働時間制、裁量労働制など)によって変わります。未払い賃金や休憩の不足が疑われる場合は、勤務先の人事担当、お住まいの地域の労働基準監督署、または社会保険労務士・弁護士にご相談ください。表中の金額は時給1,200円を仮定した計算例です。