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残業代の計算方法と法律の基礎:割増賃金・36協定をわかりやすく解説

「残業代がきちんと支払われているか自信がない」という方に向けて、労働基準法に基づく残業代の計算方法と、よく耳にする「36協定」「割増賃金」「みなし残業」の仕組みを整理します。

2026-04-22 公開 ・ 2026-09-27 更新 ・ 執筆: りゅう

結論から

  • 残業代は 1時間単価 × 割増率 × 残業時間。1時間単価は「基礎賃金 ÷ 月平均所定労働時間」で出します。
  • 割増率は時間外25%以上・法定休日35%以上・深夜25%以上。時間外が深夜に及べば50%以上になります。
  • 割増が必要になる境目は「1日8時間・週40時間」であって、会社の定時ではありません。所定7時間の会社なら、7〜8時間目に割増は不要です。
  • 「みなし残業込み」の求人は、月給の額面ではなく実質の基本給を逆算して比べてください。みなし時間を超えた分の残業代は別途支払う義務があります。
  • 36協定を結んでも、時間外労働は原則 月45時間・年360時間を超えられません。

法定労働時間と所定労働時間の違い

残業代を理解するための前提として、2つの「労働時間」の概念を押さえる必要があります。

  • 法定労働時間:労働基準法で定められた1日8時間・週40時間の上限
  • 所定労働時間:各企業の就業規則で定める労働時間(法定時間以下で自由に設定可能)

割増賃金が義務になるのは法定労働時間を超えた分だけです。ここが最も誤解されやすい点で、「定時を過ぎたら全部25%増し」ではありません。所定労働時間から8時間までの間は「法定内残業(所定外労働)」と呼ばれ、通常の時給分を支払えば足ります。

所定労働時間別・どこから割増賃金が必要になるか
所定労働時間法定内残業(割増不要)法定外残業(25%以上)9時間働いた場合
7時間7〜8時間目(1時間)8時間を超えた分9時間働くと 法定内1時間+割増1時間
7時間30分7時間30分〜8時間目(30分)8時間を超えた分9時間働くと 法定内30分+割増1時間
8時間なし8時間を超えた分すべて9時間働くと 割増1時間

つまり所定7時間の会社に勤めている人が1時間残業しても、法律上は割増分を受け取れません。ただしこれは「法律の最低ライン」の話であり、就業規則で「所定を超えたら一律25%増し」と定めている会社もあります。自分の会社がどちらなのかは、就業規則の賃金規程で確認できます。

割増賃金がいくらになるのか——場面別

割増率は労働基準法37条で決まっています。ポイントは深夜割増は「加算」されるということです。時間外労働がそのまま深夜に及べば、時間外25%に深夜25%が足されて50%になります。

割増賃金が発生する場面と割増率・具体例
場面割増率倍率具体例
法定内残業0%1.00所定7時間の会社で8時間働いた。8時間までは割増不要
時間外労働25%1.259〜18時が定時の会社で20時まで働いた。超えた2時間分
時間外労働(月60時間超)50%1.50その月の時間外がすでに60時間を超えている状態での残業
深夜労働のみ25%1.25交替制で22時〜翌5時に勤務。所定時間内でも深夜分は加算
時間外+深夜50%1.50定時を過ぎて23時まで残業した。22時以降の分
法定休日労働35%1.35週1日の法定休日に出勤した
法定休日+深夜60%1.60休日出勤が22時を回った。休日35%に深夜25%が加算される

月60時間超の時間外労働に対する50%割増は、大企業では2010年から、中小企業では2023年4月から適用されています。月60時間を超えた時点から、残業代の単価が通常の1.5倍になる計算です。

一方、「法定休日」は週1日(または4週4日)だけを指します。週休2日制の会社で土日のうち片方に出勤した場合、その日が法定休日でなければ休日割増35%ではなく、時間外労働として25%の計算になることがあります。就業規則でどちらの曜日を法定休日にしているかによって金額が変わります。

残業代の基本計算式

1時間単価 = 基礎賃金 ÷ 月平均所定労働時間

残業代 = 1時間単価 × 割増率(1.25 / 1.35 / 1.5 等) × 残業時間

分母になる「月平均所定労働時間」は、会社によって違います。週の所定労働時間から出す方法だと、週40時間なら 40時間 × 52週 ÷ 12ヶ月 = 約173.33時間です。一方、年間休日から出す方法もあり、1日8時間・年間休日120日の会社なら(365日 − 120日)× 8時間 ÷ 12ヶ月 = 約163時間になります。

この差は無視できません。分母が小さいほど1時間単価は高くなるので、年間休日が多い会社ほど同じ月給でも残業代の単価が上がります。自分の会社の数値は就業規則か給与規程に書かれているので、正確に計算したいときはそちらを使ってください。

基本給300,000円・週40時間(月平均173.33時間)の場合、1時間単価は約1,731円です。この単価で月20時間の時間外労働をすると、残業代は約43,270円になります。基本給別・残業時間別の金額は残業代計算ツールの早見表で確認できます。

基礎賃金に含める・含めない手当

1時間単価を出すときの「基礎賃金」には、原則としてすべての手当が含まれます。除外できるのは労働基準法と施行規則が挙げる7種類だけで、これは限定列挙です。会社が任意に「この手当は残業代の計算に入れない」と決めることはできません。

基礎賃金から除外できる手当・除外できない手当
手当の種類基礎賃金から注意点
家族手当除外できる扶養人数に応じて支給されるもの。一律支給なら除外できない
通勤手当除外できる実費または距離に応じたもの。一律支給なら除外できない
別居手当除外できる単身赴任手当など
子女教育手当除外できる子の教育費に対して支給されるもの
住宅手当除外できる住居費に応じて支給されるもの。一律1万円などは除外できない
臨時に支払われた賃金除外できる結婚祝金など臨時のもの
1ヶ月を超える期間ごとの賃金除外できる賞与など
役職手当・資格手当・業務手当除外できない上の7種類に入らないため基礎賃金に算入される

見落とされがちなのが「名称ではなく実態で判断される」という点です。たとえば「住宅手当」という名前でも、住居費に関係なく全員に一律2万円を支給しているなら、それは住宅手当として除外できず基礎賃金に算入されます。家族手当も同様で、扶養の有無にかかわらず一律支給なら除外できません。

役職手当・資格手当・業務手当・皆勤手当などは、そもそも7種類のどれにも当たらないため、原則として基礎賃金に入ります。これらを計算から外している会社は、残業代を過少に支払っている可能性があります。

「みなし残業」「固定残業代」を逆算する

求人票で「月給30万円(固定残業代30時間分を含む)」のような記載を見ることがあります。これは固定残業代(定額残業代)制度で、基本給に一定時間分の残業代を含めて支給する仕組みです。

問題は、額面だけを見ると実際の時給がわからないことです。月給から固定残業代の部分を逆算すると、本当の基本給と1時間単価が見えてきます。下の表は週40時間(月平均173.33時間)を前提に、固定残業代を25%割増で計算した場合の内訳です。

固定残業代込みの月給から逆算した基本給・1時間単価
求人の月給みなし時間実質の基本給1時間単価固定残業代の額
25万円20時間218,487円1,261円31,513円
25万円30時間205,533円1,186円44,467円
30万円20時間262,184円1,513円37,816円
30万円30時間246,639円1,423円53,361円
35万円30時間287,746円1,660円62,254円
35万円45時間264,246円1,525円85,754円

同じ「月給30万円」でも、みなし残業20時間の会社と30時間の会社では実質の基本給が15,545円違います。さらに、みなし残業がまったくない月給30万円の会社と比べれば差はもっと広がります。求人を比較するときは、額面ではなく「基本給 ÷ みなし時間」で並べ直すのが正しい読み方です。

合法な固定残業代として認められるには、次の条件を満たす必要があるとされています。

  • 何時間分の残業代を含むかが明確であること
  • 基本給と固定残業代が金額として区別されていること
  • みなし時間を超えた残業代は別途支給されること

「みなし残業だから何時間働いても残業代は出ない」というのは誤解であり、そのような運用は違法の可能性があります。みなし時間を超えた分は必ず別途発生します。給与明細で「基本給」「固定残業代(○時間分)」が分けて記載されているか、超過分が支払われているかを確認してください。

36協定と時間外労働の上限規制

会社が従業員に法定労働時間を超えて働かせるには、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。労働基準法第36条に基づくため、この名称で呼ばれます。届出がないまま残業させること自体が違法です。

2019年からの働き方改革関連法により、36協定を結んでも超えてはいけない時間外労働の上限が罰則つきで設けられました。

  • 原則(月):45時間
    36協定を結んでも、原則としてこれを超える時間外労働はさせられない
  • 原則(年):360時間
    月45時間 × 12ヶ月ではなく、年単位で別に上限が決まっている
  • 特別条項つき(年):720時間
    臨時的に特別な事情があり、特別条項を結んだ場合の年間上限
  • 特別条項つき(単月):100時間未満
    休日労働を含めて数える。100時間ちょうどでも上限違反になる
  • 特別条項つき(複数月平均):80時間以内
    2〜6ヶ月のどの平均をとっても超えられない。休日労働を含めて数える
  • 月45時間を超えられる回数:年6回まで
    特別条項を使える月は年の半分まで

このうち「単月100時間未満」と「複数月平均80時間以内」の2つだけは休日労働も含めて数える点が他と違います。時間外労働だけを見て上限内だと判断すると、休日出勤を足した瞬間に超えている、ということが起こり得ます。

これらに違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています。違反は労働基準監督署の調査のほか、社員からの相談・申告によって発覚することもあります。なお、上限規制は「これだけ働かせてよい」という許可ではなく、あくまで越えてはならない天井である点に注意してください。

よくある質問

残業代の計算に使う「時給」はどうやって出す?

月給(基礎賃金)÷ 月平均所定労働時間で出します。月平均所定労働時間は「年間の所定労働時間 ÷ 12」で、週40時間の会社なら約173.33時間です。年間休日が多い会社ほどこの分母が小さくなり、同じ月給でも1時間単価は高くなります。基本給300,000円・週40時間なら、1時間単価は約1,731円です。

基本給30万円で月20時間残業したら、残業代はいくら?

週40時間の会社で時間外労働のみの場合、1時間単価が約1,731円、これに割増率1.25をかけて20時間分なので、約43,270円になります。ここに深夜労働や休日労働が加わると割増率が上がります。実際の金額は基礎賃金に算入する手当によって変わるため、給与明細の内訳を確認してください。

定時が17時なのに18時まで働いた分は割増になりますか?

その1時間が1日8時間を超えているかどうかで決まります。所定労働時間が7時間(9〜17時、休憩1時間)なら、17〜18時の1時間は8時間の枠内なので「法定内残業」となり、割増は義務ではありません。通常の時給分の支払いは必要です。所定が8時間なら、その1時間は法定外残業となり25%以上の割増が必要になります。

「みなし残業30時間込み」の求人は、実際の基本給はいくら?

月給から固定残業代を逆算して考えます。月給30万円・みなし30時間・週40時間の場合、実質の基本給は約246,639円、1時間単価は約1,423円です。みなし残業を含まない月給30万円の会社と比べると、1時間単価に大きな差が出ます。求人を比べるときは、月給の額面ではなく「基本給」と「みなし時間」を見てください。

みなし残業の時間を超えて働いたら、追加の残業代は出ますか?

出ます。固定残業代はあらかじめ決めた時間分を前払いしているだけなので、その時間を超えた分は別途支払う義務があります。「みなし残業だから何時間働いても同じ」という運用は違法の可能性が高いものです。給与明細で基本給と固定残業代(何時間分か)が分けて記載されているか、超過分が支払われているかを確認してください。

残業代の時効は何年ですか?

賃金請求権の消滅時効は、2020年4月1日以降に支払われる賃金について当面3年とされています(法律上の原則は5年で、経過措置として当面3年)。つまり過去3年分までさかのぼって請求できるのが現状です。請求を検討する場合は、タイムカード・勤怠記録・業務メールの送信時刻など、労働時間を示す記録を早めに確保しておくことが重要です。

管理職には残業代が出ないというのは本当ですか?

「管理監督者」に該当する場合は時間外・休日の割増賃金の対象外になりますが、深夜割増は管理監督者にも適用されます。また、役職名が課長・部長であることと、法律上の管理監督者に当たるかどうかは別問題です。経営者と一体的な立場か、勤務時間の裁量があるか、地位にふさわしい待遇かといった実態で判断されます。役職名だけを根拠に残業代を支払わない運用は、いわゆる「名ばかり管理職」として問題になることがあります。

残業代が支払われていない場合はどこに相談すればいい?

勤務先を管轄する労働基準監督署の総合労働相談コーナーが最初の窓口になります。無料で相談でき、匿名での情報提供も可能です。金額の請求まで進める場合は、労働問題を扱う弁護士や法テラスへの相談が選択肢になります。相談の前に、就業規則・雇用契約書・給与明細・勤怠記録をそろえておくと話が早く進みます。

参考資料

この記事は労働基準法の一般的な内容を2026年時点の情報に基づいて整理したもので、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際の残業代の金額は、就業規則・雇用契約・労使協定の内容や勤務の実態によって変わります。未払い残業代の請求や労働条件のトラブルについては、労働基準監督署の総合労働相談コーナー、または弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

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