法定労働時間と所定労働時間の違い
残業代を理解するための前提として、2つの「労働時間」の概念を押さえる必要があります。
- 法定労働時間:労働基準法で定められた1日8時間・週40時間の上限
- 所定労働時間:各企業の就業規則で定める労働時間(法定時間以下で自由に設定可能)
たとえば所定労働時間が1日7時間の会社で、8時間働いた場合の1時間は「所定外労働(法定内残業)」です。割増賃金の支払いは義務ではなく、通常の時給でOKです。しかし8時間を超えた分は「法定外残業」となり、25%以上の割増賃金が義務になります。
割増賃金の3つの区分
月60時間超の時間外労働に対する50%割増は、大企業では2010年から、中小企業では2023年4月から適用されています。月60時間を超えると通常の1.5倍の残業代がもらえる計算です。
残業代の基本計算式
時給 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間
残業代 = 時給 × 割増率(1.25 / 1.35 / 1.50 等) × 残業時間
「月平均所定労働時間」は、年間労働時間を12で割った値です。たとえば所定労働時間が8時間、年間休日120日の場合、(365日−120日)×8時間÷12ヶ月=約163時間が目安になります。
月給30万円・月平均所定労働時間163時間の場合、時給は約1,840円。この時給で月20時間の時間外労働(25%割増)をすると、残業代は約46,000円になります。
基礎賃金に含める・含めない手当
残業代の計算基礎となる「時給」を計算する際、以下の7種類の手当は除外できると労働基準法で定められています。
- 家族手当(扶養人数に応じて支給されるもの)
- 通勤手当(実費相当)
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当(住居費用に応じて支給されるもの)
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
役職手当・資格手当・業務手当などはこのリストに含まれていないため、原則として基礎賃金に算入されます。会社によっては役職手当を残業代計算から除外している例が見られますが、これは違法の可能性があります。
36協定と時間外労働の上限規制
会社が従業員に法定労働時間を超えて働かせるには、労使間で「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。労働基準法第36条に基づくため、この名称で呼ばれます。
2019年からの働き方改革関連法により、36協定を結んでも超えてはいけない時間外労働の上限規制が設けられました。
- 原則:月45時間・年360時間
- 特別条項がある場合:年720時間以内
- 時間外+休日労働合計:月100時間未満
- 時間外+休日労働の2〜6ヶ月平均:月80時間以内
- 月45時間超えは年6回まで
これらに違反すると、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。違反は社員による労働基準監督署への相談・申告でも発覚することがあります。
「みなし残業」「固定残業代」の注意点
求人票で「みなし残業月30時間」のような記載を見ることがあります。これは固定残業代(定額残業代)制度で、基本給に一定時間分の残業代を含めて支給する仕組みです。
合法な固定残業代の要件は以下です。
- 何時間分の残業代を含むかが明確であること
- 基本給と固定残業代が区別されていること
- みなし時間を超えた残業代は別途支給されること
「みなし残業だから何時間働いても残業代は出ない」というのは誤解・違法です。みなし時間を超えた分は必ず別途残業代が発生します。給与明細で「基本給」「固定残業代(○時間分)」が分けて記載されているか確認しましょう。