Pitarit

日本文化・行政

干支(十二支)の由来:漢字の意味・動物が後付けされた理由・国による違い

年賀状やニュースで毎年話題になる「干支(えと)」。日本では動物のイメージが強いですが、十二支の漢字はもともと動物とはまったく関係のない字でした。字の本来の意味と、動物が後から結びついた経緯を整理します。

2026-05-20 公開 ・ 2026-09-07 更新 ・ 執筆: Pitarit 運営者

結論から

干支について誤解されやすい点は、次の5つです。

  • 十二支の漢字は動物を表す字ではない。古典では植物の成長段階になぞらえて説明される
  • 動物は後から当てられたもの。庶民が暦を覚えやすいようにするため
  • 起源は紀元前1300年頃・中国の殷(商)王朝の甲骨文字。日本へは6世紀頃に伝来
  • 本来の干支は十干+十二支の60種類。12種類なのは「十二支」のほう
  • 動物は国で違う。ベトナムは卯が、亥は日本以外では

十二支の漢字の由来——本来は植物の成長段階を表す字

「なぜ子と書いて『ねずみ』と読むのか」「丑はなぜ牛の字ではないのか」——これは十二支でいちばん多い疑問です。答えは単純で、十二支の字はもともと動物を表す字ではなかったからです。

十二支は順序を示す記号として使われていた字で、中国の古典には、これらの字を種が芽生えてから再び種に還るまでの一巡になぞらえた説明が残っています。伝統的に語られてきた解釈は次のとおりです。

十二支それぞれの字が表すとされる植物の成長段階と、後から当てられた動物
字(読み)字が表すとされる段階動物
子(ね)種の中に新しい生命が芽生えるねずみ
丑(うし)芽がまだ伸びきらず、曲がっているうし
寅(とら)芽が地上へ出ようと動き出すとら
卯(う)草木が地面を覆うように茂るうさぎ
辰(たつ)形が整い、勢いよく伸びるりゅう
巳(み)成長が極まり、伸びきるへび
午(うま)極まった勢いが衰えに転じるうま
未(ひつじ)果実が熟して味が出るひつじ
申(さる)実が成熟しきるさる
酉(とり)熟成が極みに達するにわとり
戌(いぬ)草木が枯れて滅びるいぬ
亥(い)種の中に生命が閉じ込められるいのしし

子で命が芽生え、卯で茂り、午で盛りを過ぎ、亥でふたたび種に還る——という円環になっています。「子」から始まって「亥」で終わる順番も、この成長サイクルとして読むと理由が見えてきます。

⚠️ これは中国の古典に見られる伝統的な説明であり、字源の学説としては諸説あります。ただし「十二支の字はもともと動物とは無関係だった」という点は共通しており、動物のほうが後付けであることは動きません。

動物が割り当てられた経緯——後付けの民間伝承

十二支に動物が結びついたのは中国でも後代のことです。当時は文字を読めない人が多く、暦を庶民に広めるために、覚えやすい動物のイメージを十二支に重ねたのが始まりと考えられています。

日本でよく知られている「神様が動物にレースをさせて、到着順に十二支を決めた」という民話は、中国・モンゴル・ベトナムなど東アジア各国に類似の話があります。ネズミがウシの背中に乗って先にゴールし、ネコは日時を聞き間違えて参加できなかった……という展開は、文化を問わず共通です。

つまり、「なぜこの動物なのか」に古代からの深い理由はありません。字の由来(植物の成長段階)と動物の由来(後付けの語呂と伝承)は、別々の層にある話です。

「干支」の正しい意味——本来は60種類ある

現代日本では「干支=12種類の動物」と理解されていますが、本来の干支は「十干(じっかん)」と「十二支(じゅうにし)」を組み合わせた60種類の体系を指します。十干は10種、十二支は12種で、順に組み合わせると10と12の最小公倍数である60通りで一巡します。

60年で生まれた年の干支に還るため「還暦」という祝いがあります。歴史上の出来事にも干支が組み込まれており、「甲子園」(1924年=甲子の年に開場)、「戊辰戦争」(1868年=戊辰の年)、「壬申の乱」(672年=壬申の年)はいずれもその年の干支が名前になっています。

十干は五行(木・火・土・金・水)をそれぞれ「兄(え)」「弟(と)」に分けたもので、「えと」という読み方はこの「兄弟(えと)」に由来します

十干の読みと、五行・兄弟の対応
読み五行と兄弟
きのえ木の兄
きのと木の弟
ひのえ火の兄
ひのと火の弟
つちのえ土の兄
つちのと土の弟
かのえ金の兄
かのと金の弟
みずのえ水の兄
みずのと水の弟

なぜ12種類か——古代天文学との関係

十二支が12である理由は、木星の運行にさかのぼるとされています。木星は太陽の周りを約12年で一周するため、夜空での木星の位置を12等分し、それぞれに名前を付けたのが十二支の起源という説です。

このため十二支は本来、年だけでなく「時刻(2時間ごとの12区分)」「方角(12方位)」「月」にも使われる時間・空間の単位でした。「丑三つ時(うしみつどき)」が午前2時前後を指すのも、子の刻(23〜1時)→丑の刻(1〜3時)という時刻区分から来ています。

十二支それぞれに込められた意味

動物が後付けとはいえ、そこに縁起の良い意味が読み込まれてきたのも事実です。年賀状の文面を考えるときによく使われる象徴は次のとおりです。

十二支の動物に読み込まれてきた象徴的な意味
十二支象徴とされる意味
子(ねずみ)繁殖力・新しい命の始まり
丑(うし)粘り強さ・誠実さ。一歩ずつ前進する
寅(とら)勇猛果敢・決断力
卯(うさぎ)跳躍・温和。飛躍の象徴
辰(りゅう)唯一の架空の動物。権威・成功・幸運
巳(へび)知恵・脱皮による再生
午(うま)活発・健康・情熱
未(ひつじ)穏やかさ・家族愛・平和
申(さる)器用さ・賢さ・臨機応変
酉(にわとり)勤勉・親密さ。時を告げる
戌(いぬ)忠誠・正義・守護
亥(いのしし)勇気・無病息災・突進する力

国によって違う十二支

十二支は東アジア全域に広まりましたが、同じ漢字を使いながら当てはめる動物が国ごとに違います。

国ごとに異なる十二支の動物
日本と違う動物
中国・韓国亥が「豚」。他の11種は日本と同じ
ベトナム卯が「猫」、丑が「水牛」、未が「山羊」、亥が「豚」
タイ辰が竜ではなく「ナーガ(蛇の神)」
日本亥が「いのしし」。豚としないのは日本だけ

ベトナムの十二支に猫がいるのは、十二支が伝わった時代に「卯(マオ)」の音が猫を意味する現地語と近かったため、と説明されることが多いようです。文化が伝わるときに土地の事情で変化が起こる典型例といえます。

亥を「いのしし」とするのは日本だけという点も覚えておくと、中国語圏の年賀の図案が豚になっている理由が分かります。

よくある質問

十二支の漢字はなぜあの字なのですか?動物の漢字ではないのはなぜ?

十二支の字はもともと動物を表す字ではなく、順序を示す記号として使われていました。中国の古典には、これらの字を植物が芽生えてから種に還るまでの成長段階になぞらえた説明が残っています。たとえば「子」は種の中で新しい命が生まれること、「亥」は種の中に生命が閉じ込められることを表すとされます。動物の「ねずみ」「いのしし」は後から当てられたもので、字そのものとは別の由来です。

干支の起源はいつ、どこですか?

紀元前1300年頃の中国・殷(商)王朝の甲骨文字に、すでに十干十二支が日付を数える記号として使われていた記録があります。日本へは6世紀頃、暦の制度とともに伝わりました。動物との結びつきは中国でも後代のもので、庶民に暦を覚えてもらうために後から当てられたと考えられています。

「干支」と「十二支」は同じ意味ですか?

厳密には違います。干支は十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)と十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)を組み合わせた60種類の体系を指し、十二支はそのうち12種類のほうだけを指します。現代日本では「今年の干支は午」のように十二支の意味で使うのが一般的ですが、本来の干支は「丙午」「甲子」のように2文字で表します。

なぜ60年で一周するのですか?

十干が10種類、十二支が12種類あり、両者を順に組み合わせていくと10と12の最小公倍数である60通りで元に戻るためです。60年で生まれた年の干支に還ることから「還暦」と呼びます。

「えと」という読み方の由来は?

十干を五行(木・火・土・金・水)に割り当て、それぞれを「兄(え)」と「弟(と)」に分けたことに由来します。甲は「木の兄(きのえ)」、乙は「木の弟(きのと)」というように読み、この「兄弟(えと)」が干支全体の呼び名になりました。

国によって十二支の動物は違いますか?

違います。ベトナムでは卯が「猫」、丑が「水牛」、未が「山羊」です。タイでは辰が竜ではなく「ナーガ(蛇の神)」とされます。また亥は、日本では「いのしし」ですが、中国・韓国・ベトナムでは「豚」です。同じ漢字を使いながら、当てはめる動物が土地ごとに変わっています。

参考資料

本記事は、十干十二支に関する一般的な解説(甲骨文字における十干十二支の使用、木星の運行との関係、十二支の字を植物の成長段階になぞらえる古典的解釈、東アジア各国での動物の差異)に基づいてまとめています。

字源については学説が分かれます。本記事で示した「植物の成長段階」は中国の古典に見られる伝統的な説明であり、確定した字源ではありません。学術的な出典にあたる場合は、国立国会図書館や国立民族学博物館の暦・十二支に関する資料を参照してください。

あわせて読みたい