単価は「ほしい手取り」から逆算する
単価を決めるとき、会社員時代の年収をそのまま持ってくると足りません。 フリーランスは社会保険料を全額自分で払い、経費も自分で持つためです。 先に「手元にいくら残したいか」を決めて、そこから必要な年商を逆算します。
下の表は、月18日・1日7時間・年11か月の稼働、 年間経費60万円、青色申告65万円控除の場合です。
| 手取り目標 | 必要な年商 | 月商 | 時間単価 | 1日単価 | 手取り率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 440万円 | 40万円 | 3,173円 | 22,210円 | 68.2% |
| 400万円 | 577万円 | 52万円 | 4,161円 | 29,125円 | 69.4% |
| 500万円 | 741万円 | 67万円 | 5,347円 | 37,431円 | 67.5% |
| 600万円 | 902万円 | 82万円 | 6,511円 | 45,579円 | 66.5% |
| 800万円 | 1,236万円 | 112万円 | 8,920円 | 62,440円 | 64.7% |
| 1,000万円 | 1,594万円 | 145万円 | 11,498円 | 80,489円 | 62.7% |
手取り率の列は単調に下がらず、途中で一度上がってから下がります。 この条件では手取り420万円あたり(年商605万円・69.5%)が頂点です。
力が2つ逆向きに働いているためです。経費と国民年金は所得が増えても額が変わらない固定費なので、 年商が増えるほど割合としては薄まり、手取り率を押し上げます。 一方で所得税は累進で、所得が増えるほど率そのものが上がって押し下げます。 低い帯では前者が、高い帯では後者が勝ちます。
さらに、基礎控除には段差があります。 合計所得が489万円・655万円などのしきい値を1円超えると控除額が下がり、 そこで手取りが階段状に落ちます。この条件では年商614万円のあたりがその段にあたり、 頂点の位置は実際この段差で決まっています。年商があと少しで段を超えるときは、超えた直後より手前のほうが手取りが多いという逆転が起きます。
実務上の意味は「2倍稼げば手取りも2倍」にはならないという点です。 手取り300万円から600万円へ倍にするには、年商は440万円から902万円へ、 2倍より多く必要になります。
稼働を減らすほど、時間単価は上げないと届かない
必要な年商は稼働量では変わりません(手取りの目標が同じなら同じです)。 変わるのはそれを何時間で割るかだけです。 手取り500万円を目標にしたまま、稼働条件だけを変えました。
| 稼働条件 | 年間の稼働時間 | 時間単価 | 1日単価 |
|---|---|---|---|
| 月20日 × 8時間 × 12か月 | 1,920時間 | 3,860円 | 30,881円 |
| 月18日 × 7時間 × 11か月 | 1,386時間 | 5,347円 | 37,431円 |
| 月15日 × 6時間 × 11か月 | 990時間 | 7,486円 | 44,918円 |
| 月10日 × 6時間 × 11か月 | 660時間 | 11,229円 | 67,377円 |
稼働を半分にすれば、時間単価は倍にしないと同じ手取りになりません。 「週3で働きたい」と思ったときに、その単価で受注できるかが現実的な制約になります。 稼働時間そのものの集計は時間の計算ツールが使えます。
青色申告にするかどうかで、必要な年商が変わる
| 申告方法 | 要件 | 必要な年商 | 青色65万との差 |
|---|---|---|---|
| 青色65万円 | 複式簿記+e-Taxまたは電子帳簿保存 | 741万円 | — |
| 青色55万円 | 複式簿記(紙で提出) | 747万円 | +6万円 |
| 青色10万円 | 簡易な簿記 | 776万円 | +34万円 |
| 白色申告 | 青色申告の承認を受けていない | 782万円 | +40万円 |
控除が大きいほど、同じ手取りを得るのに必要な年商は小さくて済みます。 65万円の控除を受けるには複式簿記に加えてe-Tax での申告か電子帳簿保存が要件です(国税庁 タックスアンサー No.2072)。
この計算で出せないこと
- 国民健康保険の正確な額。率も上限も自治体ごとに違い、全国一律の値はありません。 ここでは所得割の率を9%〜12%の幅で置き、 世帯・人数にかかる均等割は含めていません
- 消費税。ここで出している単価はすべて税抜(消費税を含まない)として扱っています。 上の早見表のうち必要な年商が1,000万円を超える行(手取り800万円・1,000万円の行)は、その2年後から課税事業者になり、 受け取った消費税を納める義務が生じます。インボイス登録をしている場合は登録した時点からです。 納税分は手取りから出ていくので、その帯を狙うなら税理士に相談してください
- 扶養控除・生命保険料控除・iDeCo・小規模企業共済などの控除。 本人のみの基礎控除で計算しているため、これらがあれば負担はもっと軽くなります
会社員の場合の手取りと比べたいときは年収手取り計算を使ってください。社会保険料の負担のしかたが違うので、同じ金額でも手元に残る額は変わります。
よくある質問
- 手取りで500万円ほしいなら、いくらで請ければいいですか?
- 月18日・1日7時間・年11か月の稼働、年間経費60万円、青色申告65万円控除の場合、必要な年商は741万円です。時間単価にすると5,347円、1日単価で37,431円になります。ただし国民健康保険の率は自治体で違うため、9%〜12%の幅で735万円〜754万円と動きます。
- 会社員の年収と、どう比べればいいですか?
- そのまま比べられません。会社員は健康保険・厚生年金の半分を会社が負担し、雇用保険・労災もあり、有給や賞与もあります。フリーランスは社会保険料を全額自己負担するうえ、働けない期間の保障も薄い。同じ金額なら手元に残る額も、将来受け取る年金額も変わります。単価を決めるときは「会社員の年収と同じ額」ではなく、ここで計算した必要年商を基準にしてください。
- なぜ年間の稼働月数を12より少なくするのですか?
- 案件の切れ目・長期休み・体調を崩す期間・営業や経理にかかる時間など、売上にならない期間が必ずあるためです。12か月びっしり稼働する前提で単価を決めると、1か月でも空いた時点で目標に届かなくなります。初期値を11か月にしているのはそのためです。
- 青色申告にすると、どれくらい違いますか?
- 同じ手取りを得るのに必要な年商が変わります。この早見表の条件(手取り500万円)では、青色65万円なら741万円、白色申告なら782万円で、差は40万円です。65万円の控除を受けるには複式簿記に加えて e-Tax での申告か電子帳簿保存が必要です。
- 消費税は計算に入っていますか?
- 入っていません。インボイス制度に登録して課税事業者になっている場合は、ここで出した年商に加えて消費税の納税が発生します。免税事業者のままの場合も、取引先との間で消費税分の扱いが変わることがあります。登録の有無で手取りは変わるため、実際の金額は税理士に確認してください。
出典
- 国民年金保険料(日本年金機構)— 月額17,920円・年額215,040円(令和8年度)
- No.2072 青色申告特別控除(国税庁)— 65万円・55万円・10万円の要件
※ 本ツールは概算です。実際の税額・保険料は、お住まいの自治体と税務署、 または税理士にご確認ください。青色65万円の要件や制度は改正されることがあります。