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年収と手取りはなぜ違う?社会保険料と税金の内訳をわかりやすく

「年収500万円」と聞いても、実際に口座に振り込まれるのは月30万円台前半です。2割強が社会保険料と税金として引かれるからです。何が、どんな順番で、いくら引かれているのかを1段ずつ追いかけます。

2026-05-20 公開 ・ 2026-09-27 更新 ・ 執筆: りゅう

結論から

年収500万円・独身・扶養なしの場合の結論です。

  • 手取り年収は約393万円、月あたり327,900円
  • 引かれる合計は約107万円(額面の約21.3%)
  • 内訳は社会保険料73万円、所得税9万円、住民税24万円
  • いちばん大きいのは税金ではなく社会保険料。厚生年金だけで46万円
  • 手取り率は年収が上がるほど下がる(300万円で約80.6%、1,000万円で約71.4%)

額面から手取りまでを1段ずつたどる

手取りの計算がわかりにくいのは、社会保険料と税金で引き算の順番が違うからです。社会保険料は年収にそのまま率をかけますが、税金は先に控除を引いた「課税所得」に税率をかけます。年収500万円の例で順番に追うと次のようになります。

年収500万円・独身・扶養なしの場合に、額面から手取りが決まるまでの計算の流れ
ステップ金額内容
① 年収(額面)5,000,000円給与・賞与の合計
② 社会保険料− 734,500円健康保険・厚生年金・雇用保険・子ども・子育て支援金の本人負担分
③ 給与所得控除− 1,440,000円会社員の必要経費にあたる控除
④ 給与所得3,560,000円① − ③
⑤ 基礎控除− 1,040,000円所得税の基礎控除
⑥ 課税所得(所得税)1,785,500円④ − ⑤ − ②
⑦ 所得税− 91,149円⑥に税率を適用(復興特別所得税込み)
⑧ 住民税− 239,550円基礎控除43万円で計算した課税所得の10%
⑨ 手取り年収3,934,801円① − ② − ⑦ − ⑧
⑩ 月あたり手取り327,900円⑨ ÷ 12

※ すべて年収→手取り計算ツールと同じ関数で計算しています。ツールに「年収500万円・扶養0人・交通費0円」と入力すれば同じ値になります。

注目したいのは⑥の課税所得です。年収は500万円なのに、所得税がかかるのは179万円にすぎません。給与所得控除144万円、社会保険料73万円、基礎控除104万円が順に引かれた結果です。会社員は何もしなくても年収の約64.3%が課税対象から外れている、という見方もできます。

そして⑦と⑧を比べると、所得税9万円より住民税24万円のほうが大きくなっています。住民税は一律10%で控除も所得税より少ないため、年収がそれほど高くない層では住民税のほうが負担が重くなるのが普通です。

社会保険料——手取りを最も削っているのはここ

天引きの内訳を見ると、税金より社会保険料のほうが大きいことに気づきます。年収500万円なら社会保険料73万円に対して、所得税と住民税の合計は33万円です。

社会保険料の種類ごとの本人負担率と、年収500万円の場合の年間負担額
種類本人負担率年間(年収500万)補足
健康保険4.92%246,250円労使折半。40歳以上は介護保険料が上乗せ
厚生年金9.15%457,500円労使折半。折半前は18.3%で固定
雇用保険0.50%25,000円一般の事業の本人負担分
子ども・子育て支援金0.11%5,750円令和8年4月分から徴収開始。労使折半
労災保険0.00%0円全額を会社が負担する
合計14.69%734,500円年収500万円の場合

※ 健康保険料率は協会けんぽ東京都支部(令和8年度(2026年度))の本人負担分にもとづく概算です。健康保険組合に加入している場合や他県では料率が異なります。介護保険料(40歳以上65歳未満)は含みません。

社会保険料には、税金と決定的に違う特徴が2つあります。1つ目は累進ではないこと。基本的に報酬に比例しますが、厚生年金には標準報酬月額の上限があるため、高年収になるほど負担率は頭打ちになります。2つ目は会社が同額を負担していることです。給与明細に載っている額と同じだけ、会社側も払っています。

もうひとつ知っておきたいのが標準報酬月額の仕組みです。健康保険と厚生年金の保険料は実際の給与そのものではなく、等級表に当てはめた「標準報酬月額」で決まります。等級は毎年4〜6月の報酬の平均で見直され、その年の9月から翌年8月まで適用されます(定時決定)。4〜6月に残業が集中すると、その後1年間の保険料が高めに固定されるのはこのためです。

給与所得控除——会社員の「みなし経費」

自営業者は売上から実際にかかった経費を引けますが、会社員は原則それができません。その代わりに、年収に応じて自動的に差し引かれるのが給与所得控除です。

給与所得控除の速算表と、代表的な年収での控除額
年収(給与収入)控除額計算例
220万円以下74万円(最低保障額)年収210万円 → 74万円
220万円超〜360万円以下収入 × 30% + 8万円年収350万円 → 113万円
360万円超〜660万円以下収入 × 20% + 44万円年収650万円 → 174万円
660万円超〜850万円以下収入 × 10% + 110万円年収840万円 → 194万円
850万円超195万円(上限)年収1,000万円 → 195万円

※ 区分・計算式・金額のいずれも計算ツールと同じ定義から生成しています。令和8・9年分の給与所得控除です。

控除率は年収が上がるほど段階的に下がり、850万円を超えると195万円で頭打ちになります。高年収ほど「みなし経費」の割合が小さくなる設計です。年収500万円なら144万円が控除され、これだけで額面の約28.8%が課税対象から外れます。

所得税は5%〜45%の累進課税

課税所得が決まったら、あとは税率表に当てはめるだけです。日本の所得税は超過累進課税なので、税率が上がっても上がった分にだけ高い税率がかかる仕組みになっています。速算表の「控除額」は、この段階計算を1行で済ませるための調整値です。

所得税の速算表(課税所得ごとの税率と控除額)
課税所得税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超 〜 330万円以下10%97,500円
330万円超 〜 695万円以下20%427,500円
695万円超 〜 900万円以下23%636,000円
900万円超 〜 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円超 〜 4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

※ 計算ツールが使っている税率区分をそのまま表にしています。所得税額 = 課税所得 × 税率 − 控除額。

年収500万円の例では課税所得が1,785,500円なので、税率は5%の区分です。ここで求めた税額に、さらに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされます。この復興特別所得税は2037年分まで続きます。

「年収が上がって税率区分をまたぐと手取りが減る」という誤解をときどき見かけますが、超過累進課税ではそうなりません。区分をまたいでも、高い税率がかかるのは超えた部分だけです。手取りが減るとしたら、社会保険の被扶養者から外れるなど別の要因です。

住民税は「前年の所得」をもとに翌年払う

住民税は市区町村民税と道府県民税の合計で、所得割の標準税率は一律10%です(このほかに定額の均等割があります)。所得税との最大の違いは前年の所得をもとに、翌年6月から翌々年5月にかけて徴収されるという時間差です。

この1年のズレが、生活設計にいくつかの影響を与えます。新卒1年目は住民税がゼロで、2年目の6月から急に天引きが始まります。年収が大きく下がった年の翌年は、前年の高い所得をもとにした住民税を払うことになります。退職して無職になっても、前年分の請求は届きます。

もうひとつの違いが控除額です。住民税の基礎控除は43万円で、所得税の基礎控除より少なく設定されています。扶養控除も所得税が38万円なのに対し住民税は33万円です。控除が少ないぶん課税所得が大きくなるため、中間層では住民税のほうが所得税より重くなります。

計算の前提と、令和8年度税制改正について

このページと計算ツールの数値は、次の前提で計算しています。制度は毎年変わるため、前提を明示しておきます。

  • 社会保険料率:令和8年度(2026年度)の率(健康保険は協会けんぽ東京都支部の9.85%を折半、厚生年金18.3%を折半、雇用保険は労働者負担0.5%、子ども・子育て支援金0.23%を折半)。介護保険料は40歳以上65歳未満のみの負担なので含めていません
  • 所得控除:令和8年分(2026年分)の額。令和8年度税制改正により、基礎控除は所得税法の本則62万円に租税特別措置法の加算を足した額(合計所得489万円以下なら104万円)、給与所得控除の最低保障額は74万円です
  • 住民税の基礎控除:43万円。個人住民税は地方税法で別に定められており、今回の所得税の改正では動いていません
  • その他:生命保険料控除・住宅ローン控除・iDeCoなどの個別の控除、住民税の均等割、介護保険料(40歳以上)は含みません

「103万円の壁」は2年続けて引き上げられました。令和7年度税制改正で基礎控除が48万円から58万円へ、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円へ上がって合計160万円になり、続く令和8年度税制改正で基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低保障額が74万円となって、所得税がかからない給与収入の上限は178万円まで広がりました。基礎控除の上乗せ(租税特別措置法の加算)は合計所得655万円以下が対象で、それを超えると本則の62万円になります。

紛らわしいのは、「自分に所得税がかからない上限」と「親や配偶者の扶養に入れる上限」が別の数字になったことです。前者は178万円ですが、扶養親族等の所得要件は62万円(給与収入なら136万円)なので、136万円を超えると本人に税がかからなくても扶養からは外れます。改正前はどちらも103万円で一致していました。

なお令和9年1月からは復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に下がり、代わりに防衛特別所得税(所得税額の1%)が創設されます。このページの計算は令和8年分が対象なので、復興特別所得税は2.1%のままです。

手取りを増やす現実的な手段

天引きされる項目はすべて法律で決まっているため、手取りを増やす方法は「課税所得を減らす」か「税額そのものを減らす」かのどちらかに絞られます。

  1. 所得控除を増やす:iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、生命保険料控除、医療費控除など。課税所得が減るので、減税額は「控除額 × 自分の税率」になります
  2. 税額控除を使う:住宅ローン控除は税額そのものから差し引かれるため、同じ金額なら所得控除より効きます。控除額は入居年・住宅の性能・借入残高で決まります
  3. 運用益を非課税にする:通常20.315%かかる運用益が、NISA口座なら非課税です。手取りそのものは変わりませんが、資産形成の効率が上がります
  4. 年末調整・確定申告を漏らさない:控除の申告漏れは払いすぎた税金がそのまま戻らないということです。医療費控除やふるさと納税のワンストップ特例の期限は確認しておきましょう

自分の年収・扶養人数で試算したい場合は年収→手取り計算ツール、ボーナスの手取りはボーナス手取り計算で確認できます。

よくある質問

年収500万円の手取りはいくらですか?

独身・扶養なし・交通費なしの前提で計算すると、手取り年収は約393万円、月あたり327,900円です。額面に対する手取りの割合は約78.7%になります。実際には健康保険組合の料率や住んでいる自治体、各種控除の有無で数万円単位で変わります。

手取りは額面の何割と考えればいいですか?

おおまかには8割弱です。年収300万円で約80.6%、500万円で約78.7%、1,000万円で約71.4%と、年収が上がるほど手取り率は下がります。所得税が累進課税だからです。

新卒1年目は住民税が引かれないのはなぜですか?

住民税は前年の所得をもとに計算され、その翌年6月から翌々年5月にかけて徴収されるためです。前年に所得がなければ課税されません。逆に2年目の6月から住民税の天引きが始まるので、額面が変わらなくても手取りが減ったように見えます。

退職するときに住民税で気をつけることは?

退職しても前年の所得に対する住民税は残ります。1〜5月に退職する場合は5月までの分が最後の給与や退職金から一括徴収されるのが原則で、6〜12月に退職する場合は残りを自分で納付するか一括徴収を選びます。無職期間があっても請求は来るので、転職や独立を計画するときは資金繰りに入れておいてください。

残業が多い時期に社会保険料が上がるのはなぜですか?

健康保険と厚生年金の保険料は「標準報酬月額」という等級で決まり、毎年4〜6月に支払われた報酬の平均をもとに、その年の9月から翌年8月までの等級が決まります(定時決定)。4〜6月に残業が集中すると等級が上がり、1年間の保険料が高めに固定されます。なお、この期間の保険料は将来の厚生年金額にも反映されるため、損だけとは限りません。

扶養家族が増えると手取りはどれくらい増えますか?

控除対象扶養親族が1人増えると、所得税では38万円、住民税では33万円の控除が増えます。年収500万円・所得税率5%のケースなら、所得税と住民税を合わせて年52,399円の負担減です(計算ツールで扶養人数を0人と1人にしたときの手取りの差)。年収が高く税率が上がるほど、同じ控除でも減税額は大きくなります。

ふるさと納税をすると手取りは増えますか?

手取り額そのものは増えません。ふるさと納税は寄付した金額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から控除される仕組みで、支払う税金の宛先が変わるだけです。実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる点にメリットがありますが、控除の上限額は年収と家族構成で決まるため、上限を超えた分は単なる寄付になります。

計算ツールの数字と給与明細が合わないのはなぜですか?

主な理由は3つあります。健康保険料率が加入先(協会けんぽの都道府県別料率か健康保険組合か)で違うこと、社会保険料が実際には標準報酬月額の等級表で決まること、生命保険料控除や住宅ローン控除などの個別の控除が反映されていないことです。ツールの値は概算として使い、正確な金額は源泉徴収票と給与明細で確認してください。

参考資料

免責事項

本記事および計算ツールの数値は一般的な条件にもとづく概算であり、税務・社会保険に関する個別の助言ではありません。実際の税額・保険料は、加入している健康保険、お住まいの自治体、各種控除の適用状況によって変わります。税額の確定や申告については、税理士または所轄の税務署・市区町村の窓口にご確認ください。

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