結論から
WBGT(暑さ指数)は気温・湿度・輻射熱から算出する指標で、寄与が最も大きいのは湿度です。気温が同じでも湿度が高ければ危険度は跳ね上がります。
- WBGT 28以上=厳重警戒、31以上=危険(原則外出を避ける)
- 熱中症警戒アラートはWBGT 33以上の予測で発表
- 熱中症による死亡の多くは屋内で発生。室温28℃以下を温湿度計の数値で管理する
- 大量に汗をかいたときに水だけ飲むのは危険(低ナトリウム血症)
WBGTとは何か
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、人体と外気との熱のやり取りに着目した暑さの指標です。1954年にアメリカで熱中症予防のために提案され、現在は日本の環境省や労働安全衛生機関でも採用されています。
WBGTは以下3つの温度を組み合わせて算出します。
- 湿球温度(Tw):湿度の影響を反映(体感の蒸し暑さ)
- 黒球温度(Tg):日射・輻射熱の影響を反映(直射日光の暑さ)
- 乾球温度(Td):普通の気温
屋外: WBGT = 0.7 × Tw + 0.2 × Tg + 0.1 × Td
屋内: WBGT = 0.7 × Tw + 0.3 × Tg
湿球温度の係数が最も大きいのは、湿度が熱中症リスクの決定的要因だからです。同じ気温30℃でも、湿度40%と湿度80%ではWBGTは2〜3℃異なります。
WBGTと体感温度(不快指数)の違い
日本の天気予報でよく聞く「体感温度」や「不快指数」は、主に気温と湿度から計算されるもので、日射の影響を考慮しません。一方WBGTは日射・輻射熱まで含めて評価するため、屋外の熱中症リスクを精度高く表せます。
今日の蒸し暑さ・寒さを数値で確かめたいときは、気温・風速・湿度を入力するだけで計算できる体感温度計算ツールが便利です。WBGTの警戒レベル早見表もツールページに掲載しています。
WBGT基準値と行動指針
環境省「日常生活に関する指針」では、WBGTの値ごとに危険度と推奨される行動が示されています。
特に運動や屋外作業の場では、日本スポーツ協会が「運動に関する指針」を示しており、WBGT31以上は運動を原則中止、28〜31は激しい運動を中止するよう推奨しています。学校の部活動・プロスポーツの試合判断にも用いられています。
運動時の中止基準(日本スポーツ協会の運動指針)
前掲の「日常生活に関する指針」とは別に、運動・部活動については日本スポーツ協会が独自の基準を示しています。同じWBGTでも運動時は体温が上がりやすいため、判断のラインが変わります。
「気温の目安」はあくまで参考値です。湿度が高い日は同じ気温でもWBGTは1〜2段階上がるため、気温だけで判断せず実測のWBGTを確認してください。当日の体感の目安は体感温度の計算ツールでも確認できます。
熱中症警戒アラートと特別警戒アラート
2021年度から環境省・気象庁が運用しているのが熱中症警戒アラートです。都道府県ごとに翌日または当日のWBGT予測値が33以上になると発表されます。
さらに2024年度からは、より危険度の高い状況を想定した「熱中症特別警戒アラート」も運用開始。都道府県内すべての観測地点でWBGT35以上が予測される場合に発表され、クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)の開放など、より強い対応が取られます。
日常でできる熱中症対策
水分・塩分のこまめな補給
のどが渇く前に飲むのが基本。スポーツドリンクや経口補水液は発汗が多いときに有効。コーヒー・アルコールは利尿作用があるため水分補給にはならない。
部屋の温度・湿度管理
室内でも熱中症は起きる。温度28℃以下・湿度60%以下を目安に、エアコン・除湿機・扇風機を使い分ける。
暑さに体を慣らす(暑熱順化)
本格的な夏が来る前に軽い運動で汗をかく習慣をつけると、汗の蒸発効率が上がり熱中症になりにくい体になる。
通気性のよい服装・日傘
吸湿速乾素材の服、首元を覆わないデザイン、日傘や帽子で直射日光を遮る。
高リスク者への声かけ
高齢者・子ども・持病のある人は自覚症状が遅れやすい。家族や近所で声をかけ合うことが命を守る。
熱中症の初期症状と応急処置
熱中症は症状の重さで I度・II度・III度 に分類されます。早期発見が重症化を防ぐ鍵です。
- I度(軽症):めまい・立ちくらみ・筋肉のこむら返り・大量の発汗。涼しい場所で休み、水分・塩分補給
- II度(中等症):頭痛・吐き気・嘔吐・倦怠感・集中力低下。自力で水分が摂れないなら医療機関へ
- III度(重症):意識障害・けいれん・体温40℃以上・呼びかけに反応しない。すぐに119番
応急処置の基本は「涼しい場所へ移動」「衣服をゆるめて体を冷やす(首・わきの下・足の付け根)」「水分・塩分補給」の3つです。意識がない・応答が鈍い場合は無理に水を飲ませず救急車を呼んでください。
よくある質問
- WBGT(暑さ指数)と気温は何が違いますか?
- WBGTは気温に加えて湿度と輻射熱(日射や地面からの照り返し)を組み込んだ指標で、湿度の寄与が最も大きく設計されています。気温が同じ30℃でも、湿度が高いほど汗が蒸発せず体温を下げられないため、WBGTは大きく上がります。「気温はそれほどでもないのに熱中症になる」のはこのためです。
- WBGTがいくつになったら危険ですか?
- 環境省の日常生活に関する指針では、28以上が「厳重警戒」、31以上が「危険」で原則として外出を避けるレベルです。運動については、日本スポーツ協会の指針で31以上は運動を原則中止とされています。
- 熱中症警戒アラートはどういうときに出ますか?
- 翌日または当日の暑さ指数(WBGT)の予測値が33以上と見込まれる地域に対して発表されます。さらに深刻な「熱中症特別警戒アラート」は、都道府県内のすべての地点で35以上が予測される場合に前日14時頃に発表されます。
- 室内でも熱中症になりますか?
- なります。実際に熱中症による死亡者の多くは屋内で発生しています。特に高齢者は暑さと喉の渇きを感じにくく、エアコンを使わずに室温が上がり続けるケースが典型です。室温28℃以下を目安に、体感ではなく温湿度計の数値で判断してください。
- 熱中症になりかけたとき、まず何をすればいいですか?
- 涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて首・脇の下・脚の付け根を冷やし、経口補水液など塩分を含む水分を摂ります。自分で水分を飲めない、意識がはっきりしない、けいれんがある場合は自力での回復は望めないため、すぐに救急車を呼んでください。
- 水だけ飲んでいれば大丈夫ですか?
- 大量に汗をかいた状態で水だけを補給すると、血液中の塩分濃度が下がって「低ナトリウム血症」を起こし、かえって具合が悪くなることがあります。汗を多くかいたときはスポーツドリンクや経口補水液など、塩分と糖分を含むものを選んでください。